私は、ショッピングセンターの中のテナントに入っている、あるショップで働いている。
お客様にはいつも笑顔で接しているが、今日はいつになく腹が立った。
確かに50才半ばにもなれば、おばちゃんだ。近所の子供たちからもおばちゃんと呼ばれているし、子供の友達もおばちゃんと呼ぶ。そのことに異論はない。
私の姪たちは、30才過ぎているが私のことを〇〇〇姉ちゃんと呼ぶ。
もちろん彼女たちが幼、い頃にそう強要した成果でもある。
かと言って、
仮に彼女たちから今、おばちゃんと呼ばれたところで、私だって怒りはしない。
だって、ホントに叔母なのだから叔母ちゃんでもいいのだ。
私だって、そう心が狭いわけではない。
だが、今日は久しぶりに腹が立った。
今日のお昼時、その男はやってきた。
ちょうどその時、ショップの部屋続きにある休憩室で、私はお弁当を食べていた。
2名体制なので、お店には23歳のギャル子が1人で仕事をしていた。
「おばちゃんは、今日おらんの?」と男がギャル子に聞いている声が聞こえた。
「今、休憩に入ってます」とギャル子は答えた。
何で‟おばちゃん„の一言で、私だと思うんだ?
他にもいるではないか・・・・・おばちゃんイコール私とは限らないだろう。
ショップには、全部で5人の女性が時間によって、シフトを組んで働いている。
私は、その中で最年長者。
そりゃ、私のことだわね。
分かってはいるが、なんかむなしい。
彼女が私だと思ったのも、仕方のないことだ。
呼んでくるよう言われたらしくギャル子が、休憩室をのぞき込みながら言った。
「お客さんが用事あるみたいですよ」
渋々店に出ると、頭がクラっとなった。
このおっさんが私をおばちゃんと呼んだの?
見た目は、40過ぎ・・・・
そういえば、一週間ほど前に接客した男だった。
頭頂だけが異様にハゲて、そのカッパみたいな頭に見覚えがあった。
「おばちゃんさ~、この前みたいにさ~領収書をさ~5枚ぐらいにさ~分けて書いて欲しいんだけど」
さ~が多い男だ。
そんなことギャル子に言えばいいことではないか、どうでもいいことで呼び出されたのも腹が立ったが、そこはベテランよ、営業スマイルで対応した。
その男は、その後もなれなれしくおばちゃんを連発した。
なぜ、ハゲてる中年男におばちゃんなどと言われなきゃいけないんだろうか。
これでも私は、イケてる熟女を目指しているのだ。
目指しているだけなのだが・・・・。
傷ついた。
せめて、まだ若造なら許せもするが、これって違法じゃないの。?
そんな法律あったっけ?
いや、是非とも作って欲しい。
赤の他人をおばちゃん呼ばわりするのは、年齢制限ありに決まってるだろうが。
しかも私は、いつも名札を付けている。
名前で呼べよ。
おばちゃんなどと、ショップ店員をちょっとバカにしてないか?
女心の分らない、こんな輩を野放しにしてはいけない!
その後、私はこの男に睡眠薬を飲ませ、縄でぐるぐる巻きにして、車で一番近い海まで運び、重石をくくり付け、冷たい海に投げ込んだ。
もちろん、妄想の世界ではあったが・・・・・。
そういえば、あの男、ハゲているからおっさんに見えたのであって、意外と若かったのかもしれない。
きっとそうだ!そういうことにしておこう。
そう思わなければ、今夜は眠れそうにないもの。