娘が今年の春卒業し、4月から専門学校に行く。
専門学校といえども、結構お金がかかる。
2年という短い期間ではあるが、教材費、研修費なども含めると、国立4年大の費用と同じぐらいかかる。
我が家は先月、入学金と前期分の授業料を払い、微々たる預金もスカンピンだ。
しかも3月には、教材費とか検定費とか研修費だとかで、20万ほどを支払わなきゃいけない。
働けど、働けど、猶我が暮らし楽にならざり・・・・ちっと手を見る。(石川啄木)
そんな心境だわ。
いや、私の心境はどうでもいい。
そんなものは、吹けば飛ぶほどの軽さだ。
今日は娘の友人のSちゃんの重い話である。
仲良しグループのSちゃんは、専攻する科は違うが、娘と同じ専門学校に
通うことになっている。
はずだった。
それなのに、なぜかSちゃんは今、自力で就職先を探している。
Sちゃんは、お姉ちゃんとダウン症の妹がいる、母子家庭だ。
Sちゃんは、親に頼らず奨学金を借りて専門学校に通うつもりだった。
奨学金の採用申し込みは、3年生になり程なく始まった。
昨年の春のことだ。
日本学生支援機構の奨学金には一種奨学金と、二種奨学金の二つがある。
一種奨学金は無利息だが、二種奨学金は利息付きだ。
一種の方は成績3、5以上という条件が学校側で付けられたため、ちょっと足りない
Sちゃんは二種で申し込んだ。
Sちゃんの夢は、ドレスコーディネーターになること。
花嫁さんに、メイクを施し、髪飾りからドレスまでをコーディネートする仕事だ。
まだ、他のみんなが進路を決めかねている頃から、Sちゃんの夢はしっかりと決まっていた。
2年生になった頃には、行く学校を決め、、積極的にオープンキャンパスに参加した。
休みの度に通いつめ、10回以上行ったらしい。
そして、特別特待生の試験を受け20万の免除も勝ち取った。
それが、
昨年の11月頃だろうか、娘が言った。
「Sちゃん奨学金が借りれないらしいよ」
そんなことがあるのだろうか。
一種ならともかく、二種は誰でも借りられるのでは?
確かに、親の収入が高すぎる場合は借りれない。
でも、Sちゃんのお母さんは、パートで生活を支えているので、これには該当しないはずだ。
そもそも、収入が高けりゃ、奨学金をアテにするはずもない。
どう考えてもおかしい。
奨学金は、本人が借りて、本人が働きながら返済するものだ。
仮に、親が借金していたとして、それを踏み倒してブラックリストの超注意人物とだったとしても、それが理由で借りられないということはないと聞いている。
むしろ、そんな親の子こそ救われるべきだ。
もちろん、Sちゃんのお母さんはブラックリストの注意人物とは無関係だ。
何度か会っているが、断じてそんな人ではない。
私にだって、人を見る目はある。
あんた騙されやすいのよね、と、たまに言われるが・・・・。
それでもSちゃんは、今年の初め辺りまではあきらめていなかった。
まだこの頃は、明るかったと娘が言う。
まだ何とかなる!
と、Sちゃんは信じていたのだろう。
確かに目先の事だけを考えれば、まだ道はあったと思う。
いろんな教育ローンもあるし、専門校には授業料の分割払いの制度もあったはずだ。
だが、一月締め切りの入学金が専門校に支払われることはなかった。
お母さんとSちゃんとの間にどんなやり取りがあったのかはわからない。
当初Sちゃんを応援していたお母さんに、どういった思いがあったのかもわからない。
やむにやまれぬ事情があったことだけは確かだ。
もしかしたら、二種奨学金も支援機構が貸さなかったのではなく、Sちゃんの家庭の事情のせいだったのかもしれない。
Sちゃんは、あきらめた。
というか、入学金が払われなかった時点で完全アウトである。
しばらく落ち込んでいたSちゃんであったが、もともと明るい子である。
今月になってすぐ、学級担任に就職相談に行った。
だが、
今頃言っても就職先はないと担任の先生に言われたらしい。
しかも
先生は何で今頃になって言い出すの?と責める口調だったとい言う。
Sちゃんに付き添っていた娘の方が怒っていた。
もともと、娘の通う学校は進学校で就職は全体の一割にも満たない。
実績があまりないし、先生方も就職には力を入れていない。
それでも担任って、生徒が困っていたら全力で力になろうとするもんじゃないの?
こんな人が娘達の担任だったなんて残念だ。
だから今、Sちゃんは就活中だ。
もう、高校は卒業式まで休みだ。
Sちゃんの今の目標は、3月末までに仕事を見つけることだ。
けな気だ。なんとけな気な子だろう。
これまでの話は、全部娘から聞いた話なのだが、まだたった18歳だというのに、
人生の試練に立ち向かっていることを思うと胸が痛い。
ただ今は、Sちゃんがいい仕事に就けますように・・・・。
そう祈るばかりだ。