つつのんの気まぐれ日記

アラカン女子の複雑怪奇な頭の中を書いていきます。

あうんの呼吸には究極なるものがあった!?

スポーツには、ペアーを組んでやる競技がある。

卓球、テニス、バトミントン、ゴルフなどのダブルス戦だ。

もちろん、スポーツの上達に最も重要なのは日頃の練習だろうが、ペアーでやるにはそれと

もう一つ、二人の呼吸も同じぐらい大切だ。

これが合わないと勝利は難しいだろう。

あうんの呼吸というやつである。

もちろんこれは、夫婦にも言える。

長い人生を共に生きて行くなら、あうんの呼吸が必要だ。

 

私の友人N子はご主人ととても仲がいい。

先日遊びに行った時のことだ。

ご主人が、襖を隔てた隣の部屋で、何やらごそごそと引き出しなどを開けている。

私の隣でテレビを見ていたN子は、すぐに襖の向こうのご主人に聞こえるようにこう言った。

「引き出しの二番目に入ってるよ」

別にご主人は、N子に探し物の場所を聞いたわけではない。

それどころか、探し物をしていることさえ言ってはいない。

ただ、ガサゴソと物音を立てただけだ。

「ああ、あった、あった」

と、ご主人が喜んでいる。

ちゃんと探し物は、N子の言った場所にあったようだ。

 

「ねえ、ほら、アレさーどうなった?」

N子がご主人に何か聞いてごいる。

「あー、何か来月になったらしいぞ」

ご主人はアレだけでその意味が分かるらしく即答した。

傍で聞いてる私には、話の内容がさっぱり見えない。

この夫婦は、いつもこうだ。

アレだとかソレだとか、主語を明確にしないで会話する。

それで話が通じるから大したもんだ。

 

「あんたたち、あうんの呼吸だよね」

と言うと

「まあ、30年も一緒にいれば、大概のことは分かるようになるもんだって」

とN子は自信ありげに答えた。

 

私は、夫が何考えているかなんて、さっぱりわからない・・・・・。

 

今日、買い物から帰ってくると、マンションの駐車場に座り込んで、杖を地面に叩きつけているご老人がいた。

「はなえー!はなえー!」

誰かの名前を呼んでいる。

いや、怒鳴っている。

最初は、何やってんだろう、と思ったが、ご老人がいたのは来訪者用の駐車スペースである。

乗っていたであろう車の後頭部座席のドアが開け放たれていた。

どうやら、車から降りた際に転んだのだろう。

1人では起き上がれない様子。

足が悪いようだ。

 

助けねば・・・・

私は、慌てて自分の車から降りた。

 

が、

 

ちょっと待てよ・・・・

 

30秒ほど考えた。

 

相手は、杖を持っている。

しかもものすごい剣幕で、怒っている。

あの杖で、もし殴られたら・・・・・・

痛いよね・・・・・

 

一瞬だが、ほんの一瞬よ。

逃げようか・・・・

と思ったが、正義感の方が勝った。

(どこにあったんだよ、そんなもん?)

 

私は意を決して、

 

「大丈夫ですか?」

と、声をかけた。

 

「はなえは、どこにおるんや!」

 

誰だよ、はなえって。

 

私は腕を抱え込み、何とかそのご老人を車に押し込んだ。

オモッ!年寄りなのに毎日何食べてんだよ。

 

話を聞くと、いや聞いてはいない。

勝手にしゃべりだした。

 

奥さん(はなえさん)の友人がこのマンションに住んでいて、届け物を渡しに来たが、もう30分以上も戻ってこないと言う。

 

「もうこれ以上は許さん!」

と、ご老人はまたもや車から出ようとする。

 

「チョ、チョ、チョト待って下さい、私が呼んできますから。奥さんのお友達は何号室なんですか?」

 

「知らん!」

 

知らんのに、探しに行こうとしたのかよ!

 

私は何とかご老人をなだめ、マンションの中に向かった。

管理人さんに聞けば来訪者の駐車記録があるので、分かるはずだったからだ。

 

幸い、その奥さんらしき人は、玄関で友人と話していた。

 

はなえさんであることを確認したうえで、

「ご主人が待ちくたびれてらっしゃいますよ」

 

「あら、ごめんなさいね。ご迷惑かけたんでしょう、あの人のことだから、怒ってるでしょう?

放っておいていいわよ」

ケロリと言う。

 

こっちが困る。

まだ車の中に買い物の袋が置いたままだ。

このまま一人で車まで戻ったら、とっ捕まって文句を言われるのは目に見えている。

私は、奥さんに戻るよう哀願した。

何でこうなるの?

 

私が困っているのが分かったのだろう。

渋々ながらも奥さんは、私と車に戻ってくれた。

 

車に戻ると、ご老人は険しい顔をして腕組みをしていた。

 

「いつまでも何しとるんや、お前は!」

「あら、お父さん格子戸の修理〇〇サンが××××・・・・」

 

「すぐに戻ってくるって言うから行かせたんだろうが!」

「〇〇サンのお孫さん結婚決まったんだって、×××××××・・・・・」

 

「おまえはいつも遅い、この前の××××××・・・・」

「今日の晩ご飯は、××××××・・・・・・・」

 

この二人、話が全くかみ合っていない。

気づいているのだろうか。

 

奥さんは、相手が怒っていようが全然気にならないらしい。

ケタケタと笑い声さえ立てた。

 

恐るべし。

 

奥さんは、呆然とつっ立っている私にお礼を言い、ご主人と意味不明な会話をしながら帰っていった。

 

私はなぜか車が見えなくなるまで二人を見送った。

 

阿吽とは、吐く息と吸う息のことだ。

この息がぴったりと合っていることをあうんの呼吸と言うが・・・・・。

 

ずっと、怒っていたご主人。

ずっと、陽気なままの奥さん。

 

あの夫婦・・・・・

 

まるで、吐く息がご主人で、吸う息が奥さん。

 

二人で一つの呼吸だ。

 

これぞ、究極のあうんの呼吸ではなかろうか!??????

 

あうんの呼吸とはなんと奥深いのだろうか。

 

また一つ勉強になった。

 

いったい、何の勉強だよ!