Uちゃんのお母さん(Sさん)から電話があったのは昨日のこと。
娘の成人式の振袖のことだ。
仲良しのUちゃんと娘は平成31年度に成人式を迎える。
まだ先の話じゃんか・・・・・
そう思っていた。
だが最近は、振袖の予約は2年前から始まると言う。早めに予約しないと、いい振袖は、選べなくなるし着付けなどの予約も希望通りとはいかなくなるらしい。
確かに、ネット情報を見るとそう書いてある。
今年の春先から、やたらと振袖のカタログが次々に送られてきていたのはそう言うことだったのか・・・
あたしはてっきり、一年、間違えてんじゃないの?
と思い、そのカタログは次の廃品回収にでも出そうと思い、新聞と一緒にひもでくくっていた。
「そろそろ振袖準備しなきゃいけないよね、今度の日曜空いてる?」
と、Sさんが聞いてきた。
まずいことに、空いてるじゃないか…‥。
つい、うんと返事をしてしまった。
「同僚の人がね、10月中旬までに契約すると振袖が半額になるキャンペーンやってるっと教えてくれたのよ、一緒に子供達連れて行かない?」
詳しく話を聞いてみると、振袖が半額で20万ほど、写真とメイクと着付けと髪のセットで別に3万だと言う。Sさんの同僚は、もう契約を済ませたらしい。
振袖が半額で20万?半額でそれってことは40万の振袖ってこと?
うったまげたわ
レンタルだよ・・・・・
たった一日の成人式のレンタル費用が、半額になっても23万かかるってこと?
私はてっきり10万もあれば足りるんじゃないかと思っていた。完全に予算オーバーである。
皆、こんなにお金かけてんの?
「だって、成人式って子供にとって一瞬の輝きだよ。一生の思い出になるからね、やっぱりちゃんとしてあげた方がいいよ」
と、Sさんはテンション高い
丁度同時に、娘もライン電話でUちゃんと振袖の話をしていた。SさんがUちゃんにうちの娘に一緒に行こうと誘いなさいと言ったらしい。
あんまり乗る気がしなかったが、取り合えず肝心の娘当人次第である。
私は、「子供に行くかどうか、聞いてみるわ」
そう言って電話を切った。
しばらくして、Uちゃんと話していた娘も話がついたらしく、電話を切った。
「Uちゃんから話聞いたよね?どうなったん?振袖見に行く?」
「行かんよ、日曜日は忙しいし」
どうせ寝てるだけだろ・・・・
「Uも行きたくないらしいよ、でも、行くと思うけどね。過保護のカホコちゃんだから」
「Uちゃんのお母さんが、娘の一瞬の輝きだとか、一生の思い出だとか言ってたけど・・・・」
「アホくさ~、成人式で振袖切るのが一瞬の輝き?つまら~ん」
「冷めてるよねーアンタって‥‥振袖着たくないん?」
「お母さんが着て欲しいって言うなら、着てあげてもいいよ」
別に言わないけど・・・・・・でも、後で愛情がないと言われるのも困る!
「20万以上かかるってよ」
と、言ってみた。娘っにとって、20万てどんな感覚なのか?
「はー?20万もかかるんだったら、奨学金の返済に充ててよ!」
何と、現実的な娘なんだろう・・・・・・・本気で言ってんのか?
我が家は、進学費用の三分の一程ではあるが奨学金を娘に借りさせている。
確か、Uちゃんは進学費用の全額を奨学金で賄っているはずだ。そう高3の時にSさんから聞いているが・・・・・・・。
確かに、進学費用と成人式費用は別物だ。
子供に対するお金のかけ方ってホント親によって違うよね。
我が家は、大概において当人任せだ。
できることはしてやるけど、できないことは自分の力でやるようにと、ハッキリ言ってある。
私は、「娘が行かないと言ってるから、やめとくわ、ごめんね」
と、ラインで断った。
Sさんからすぐに返信が来た。
★★★子供と二人で行ってくるね、早めに決めないと後悔するかもよー(笑)★★★
だとさ。
しねーよ。
やっぱり、行くんだ。Uちゃんは行きたくないらしいのに・・・・・一瞬の輝きのために、一生の思い出のために。いったい誰の思い出だよ・・・・。
娘もUちゃんも特別かわいいと言うわけでも、特別不細工と言うわけでもない。天ぷら定食のランクで言ったら行ったら、松竹梅の竹ってとこかな。
成人式の一瞬の輝きをどうとらえるかは人それぞれだが、高級の着物を着せたら、竹が松になるのだろうか。うちの近くの天ぷら屋さんは梅でも十分美味しいよ
何の話してんだ?
ふと、自分の成人式を考えてみた。
成人式と言っても、大人の自覚が芽生えたわけでもなく、何か特別な日でもなかったような気がするが・・・・。
当時は、振袖じゃなかったからそう思うのか?
だが、私は成人式を終えて程なくして、振袖を着て写真を撮りに行った。
親から、20歳になったのだから見合い写真を撮れとしつこく言われ、いやいやながらも振袖を着た。
あの写真どこに行ったのだろう。確か数万かかったはずだ。
別に見たくもないが…‥一度ぐらい見合いしとくんだったなーと後悔している。
そしたら、あんなさえない男(夫)と結婚せず、今頃は、大金持ちに嫁いで広い芝生のある家に住み、優雅な生活を送っていたかもしれない。
イメージはこうだ。
池には数百万円の錦鯉がいて、その中に一緒にカメがスイスイ泳いでいる。あんまり見ない光景だが許せ。その周りを毛がふさふさしたゴールデンレトリーバーと勇敢で従順なドーベルマンといたずら好きのシベリアンハスキー犬が走り回り、そして花壇には、ホピ―やガーベラ、日日草など色とりどりの鮮やかな花が咲き乱れている。
そして私は、足元にじゃれつく太った猫をそっと抱き上げ、中島みゆきの「悪女」を口ずさみ、ベンチで花壇をうっとり眺め、カルピスを飲んでいる。
あっ、そうだ!お手伝いさんには、 30年前、私に30万の借金して踏み倒した元友人K子を雇おう。そして、K子にはハチの巣の駆除と朝5時にたたき起こして、ヤギの乳搾りをさせよう!
ヤギ?蜂の巣?どんなお金持ちだ?
わたしは、奥様と呼ばれたいんだ!
だが、結局その写真は役に立たなかった
振袖の写真なんかで人生は変わらない・・・・・。
どんなに着飾って、一生一代の勝負を賭けたところで何なんだ?
私にとって、意味のある日は、たくさんある。
そして、その日はいつも偶然やって来た。
思うだけで胸がこみ上げ熱くなるような出来事は、日常に起こるものだ。
同窓会の帰り、酔っぱらった同級生の男子と自転車の二人乗りをして田んぼに突っ込んで泥まみれになったお互いのを見て大声笑い合ったあの日。
専門学校の卒業旅行で、逆ナンパした男数人とゲームセンターで遊んでいた時、警察が一斉にその男を捕まえに来た。一味と間違われ、取っ捕まりそうになったが間一髪で友達4人と逃げ切った。ビルの隙間の薄暗い中で、手を互いにしっかりと握りしめ「(捕まらなくて)よかったねー」と一緒に友達と泣いたあの日。この時の男の一人がコンビニ強盗犯だったのだ
大々的に行っていたある業界の展示会。まだ若かりし頃、主催者だった私の勤める会社にかかってきた一本の電話。対応したのは私だ。展示会がどういうものかという問い合わせ。もちろん丁寧に説明した。展示会終了後、一通の手紙が会社宛てに届いた。電話をかけてきた人は、同じ業界の販売会社の社長さんだったのだ。展示会に出品していたあるメーカーと、一億円近くのとてもいい商談ができたと言うお礼状だった。そこには、対応した私の名前が書かれ、この土地の温かさをたたえる内容とお礼の言葉が述べられていた。専務に急に呼び出され、怒られるのかと思って恐る恐るしている私にそっと専務はその手紙を私に渡してくれた。心が震えた。小さな何気ない行動が大きなものに繋がっている!そう確信した瞬間だった。
他にもある。偽造領収書を書くように言われ、きっぱりと上司の目を見て断ったあの日の勇気。なぜかその行為は反抗とは受け取られず、上司が私を信頼するきっかけとなった。
身も凍るような寒い日、ある人に言われ、被災地のボランティアに仕方なくイヤイヤ参加した。靴に入った水の冷たさに耐えながらもゴミを集めたり、重いものを持ったりと体力限界まで働いた。その時に地元の人が振舞ってくれた一杯の温かい豚汁の味、骨の髄まで染み入った。この日、人の役に立つって、人の心をこんなにも豊かにしてくれることを知った。
思いつくままに書いているが、他にもたくさんあって書ききれない。
他人から見たら、その辺に転がっている何の価値もない石ころみたいな思い出に見えるかもしれない。
それでも、その時私は輝いていた!
成人式の思い出など、その比ではない。
おまえ子供の成人式の費用をケチろうと、そんなまどろっこしいことを言ってるんだろ?
YES。
親が子供にしてやれること、それはその家の経済状況によって違う。
世の中には精一杯着飾って、成人式を盛大に祝ってもらう子供もいるだろう。
その一方で、親を気遣って成人式の振袖のことを切り出せない子もいるだろう。
二十歳と言う大人になるスタートの日が、娘たちにとって格差を感じる日であってはいけないと思うのだが・・・・。
最近の成人式はちょっと度が過ぎているように感じる。
一瞬の輝き、一生の思い出は成人式とは限らない。
それはある日、偶然やってくる!
そして、それは心のシャッターを自動的に押してくれるのだ!
今のところ、うちの娘は振袖に興味がなさそうだ。だが、そう安心ばかりもしていられない。アイツはコロコロ気が変わる
いっそ私の振袖を着てくれればいいのだが・・・・私の振袖は白系に上品な?花柄。昔は薄い色が好まれたが、最近は赤だとか、青だとかはっきりした色の濃い振袖が人気があるようだ。
しかもうちのぽちゃり娘は白を天敵みたいに思っている。
一式レンタルは免れないだろう
だが、うちにはうちの家計の予算てものがある
親が子供の成人式の振袖で見栄の張り合いをするつもりはない。
SさんはSさんで私は私だ。
もしも、娘がUちゃんに誘発されて、20万以上の振袖をねだったら、私はこう言おうと思っている。
娘よ、よく聞け!
振袖の値段なんかで親の愛情は計れない!
一瞬の輝きも一生の思い出も、成人式とは別の場所にある!
これがケチな私が考え出した娘への苦肉のいい訳である。てかっ。
でも、本心でもある。