郵便局で年賀状が11月1日から発売される。普通ハガキは62円に上がったものの年賀状は据え置きで52円のままだ。
年賀状は需要が高いため、黒字を維持しているからだそうだ。もちろん値上げにになれば、年賀状を出さなくなる人が出てくることを恐れてのことだとも思う。
需要が高い?黒字?
まあ、いいことだ。
だが、この黒字に金券ショップが一役買っているのは否定できないだろう。
私のいる金券ショップも毎年、年賀状が発売初日の午後から店頭に並ぶ。
早い。
それもそのはずだ。金券ショップの買取は、発売日から3日~5日が最も買取率が高い。
どうせ売るなら、高い方がいい、せめてこの期間に一枚単価40円以上で売りたいところだろう。
だいたいこの期間の買取は、完封で40円から45円だ。バラになるとちょっと下がる。
例年、この期間に大量持ち込みがある。他県からわざわざいらして下さるお客様もいる。
もちろん、県内からが多いが、大量持ち込みの場合はさすがに近場の人はいない。
当店のようにショッピングセンターの中にあると、どこの誰ぞに見られるとも分からない。お客様は背後の目を気にされる。バレたら大変だもんね。
お客様には当店の顧客カードに個人情報を書いていただく。(買取1万以上)
これを気にされる方は多い。
だが、
御代官様~どうぞご存分にお見届け下さいませ~
と、金券ショップ側がこの顧客カードを差し出すのは警察だけだ。
古物商の管轄は警察の防犯係なのだ。偽造品や盗品とかいろいろあるからね。
防犯係の警官はホシを追ってるんだね。私も、一度だけ聞かれた。
「この顧客カードにある収入印紙を売りにに来た人の特徴を覚えていますか?」
顧客カードには個人情報とは他にその人が売っていった商品名と買い取った金額が記入されている。
考えるふりをしていると、別の角度から質問をしてきた。
「40代の小太りの色白の眼鏡をかけた男が収入印紙を売りに来たことはありませんか?」
その警官は、私の記憶を誘い出そうとした。
だが、そう質問したその警官こそがその特徴にピタリと当てはまっていた。ビンゴ!
それ、お前だろ!と言いたいのをこらえ、「そんな人はいなかったと思います」と答えておいた。
知ったこっちゃない。
ちょっと話がズレてしまったが、
仮に、この防犯係の警官が、金券ショップの個人情報にたまたま、中学の時、自分をいじめた同級生の名前をを見つけたとしよう。
そして、その同級生が年賀状を売りに来たことを知る。
当然悪魔がこうささやく。
「仕返しにそいつのことを勤め先の郵便局に告げ口しなよ」と。
残念ながら、彼らには守秘義務がある。そんなバカなことはしないだろう。しかもそんな偶然もあり得ない。
もちろん、私達にも守秘義務がある。
私達は、お客様の名前、生年月日、年齢、職業(会社員か自営業かパートかの区分け程度)を書いていただき、個人情報を知ることになるが、郵便局の人が調査に来たとしても個人情報の載っている顧客カードを絶対に見せることはない。この顧客カードをもとにDMを送ったりもしない。薄利の金券ショップがそんなことをしていたら赤字になる。
この顧客カードは、警察の防犯係の人が周期的に見に来ることはあっても、後は倉庫の暗闇で眠り続けるだけだ。
要するに言いたいことは、
個人情報は気にすることはない!
それともう一つ、お年玉番号からバレるのではないかと気にされる方もいらっしゃるようだ。
だが、県下にはたくさんの金券ショップがあり、それぞれの金券ショップにはたくさんの方からの買取をしている年賀状がある。その番号を店頭に見本として並ぶ一部のハガキから見つけるのは、雲をつかむような話だ。
もちろん、私達が買い取った年賀状の番号を誰かに教えることもない。だから、その点についてもさほど心配ないように思う。
せいぜい、年賀状を売りに来た現場を押さえられないよう気を付けることが最大の注意点だろう。
年賀状を売りに来る人は気が気ではないのだろう。
数年前、郵便局員の持ち込み取り締まりの強化!などと噂が出回った時は、ちょっと心配したものだが、何のことはない、買取数が落ち込むこともなく今に至っている。
気にしながらも、郵便局員さんてちゃっかりやってるんじゃん!
この時期は笑うものと泣くもの、明暗が分かれる。
郵便局員さんの過酷なノルマが、金券ショップに恩恵をもたらしていると言うこの構図。
損しているのは、かわいそうな局員さん。だって、その差額は自腹だもんね。
でも、もし最初から達成できないノルマなら、できるだけ早く売ろう。ハガキの買取は、最初に時期を逃すと、段々買取率は下がっていく。せめて、11月中には売りたいもんだ。
お客様の中には、この年賀状をご丁寧に150枚、100枚とか、50枚とかに分け、袋に入れ替えて持ち込みになる方がいらっしゃる。
それ損してますから!
完封のまま買取してもらおう。多くの店がバラか完封かによって買い取り率に差をつけている。完封とは、茶色の厚紙に200枚とか100枚をきれいに包装してある状態のことだ。
他にも寄付金付きとか、写真用とかちょっと高いハガキもあるが、これも通常の年賀状52円と同じ扱いで買取をするところが多いので、これらの高いハガキは自腹の部分がより大きくなってしまう。売りたいとお考えの方は、その辺のところもちゃんと考えようね。
お客様の中には、箱単位(4000枚入り)でお持ち下さる方もいる。3箱で12000枚、大概最も高い時期にお持ちくださるので50万超えの支払いである。
これ、ノルマ超えてないか?
そんなに売り上げをあげたい理由って何なんだろう。ボーナス査定が驚くほど上がる?もしかして、毎年続ければ、昇進に関係してくるのか?それとも、役職が付くとこれだけのノルマが実際課せられるのだろうか?
聞くわけにもいかないので、毎年疑問に思っている。
だいたい、こういう大口のお客様は、30代後半から40代が多い。
その一方で、12月中旬くらいから、若い局員さんが、ショッピングセンターの一角で小さなテーブルの上に年賀状を並べ小さな営業を始める。自主的なのか、それともノルマ達成のため、局からやらされているのか・・・・・しかも勤務時間外の夕方や日曜日に見かける。
毎年の光景だ。
売れるわけがない!
同じショッピングセンターで大掛かりな看板をあげ、当金券ショップが全く同じものを安く販売しているのだから。
金券ショップは、だいたい、新年賀状を48円から50円で販売する。
当店は、毎年50円販売だが、たった2円でもお客様は喜んで下さる。ショッピングセンターの中にあるため、郵便局まで行かずお買い物のついでに買っていけるのもありがたいとおっしゃる。目立つ場所にあるため、たまたま通路を歩いているお客様が思い出して買っていかれる場合もあるが、半数以上の方が、毎年買って下さっている方々だ。
だが、この時期私達は地獄だ。忙しい。当金券ショップはこの時期最高の来店数を達成する。
さすがに年末は少ないだろうと思うだろうが、これが、意外と多い。30日、31日に200枚の完封を買っていく人もいるから不思議だ。
やめとけばいいものを、
「(年賀状出すの)今からですか?」
などと、私は毎年余計なことを言う。
当店のお客様は皆気のいい人ばかりのせいか、私のこんな失言?(わざとだが)にも
アハッと笑って、「いくらなんでも(元旦には)間に合いませんよね?」と、質問で返してくれる。
そりゃ無理だ。世の中、ぎりぎりにしか動かない人が多い。
私は、お客様の背中に「頑張ってくださーい」とエールを送る。
こんなやり取りを毎年やっている。
ちょっと、買い取りのところで言い忘れたが、この年賀状、年明けももちろん買取する。書き損じも何年前のでもOKだ。但し、年賀状の場合、書き損じの両面書きはアウト、片面だけなら、完全セーフだ。(お店によって、店員によって多少判断は違う)これが普通ハガキ、暑中ハガキなら、両面完成されていても、ポストに入れてなければ買う。
なぜか?
通常のハガキは消印が押されなければ、完全に出していいないことが分かり、年賀状は、消印がもともと押されないので、両面書かれていると、出したのか出してないのかがはっきりしないためだ。もちろん、枚数が複数枚あれば、差出人を見ることによって出していないことの判断がつくのだが、金券ショップはちょっとその辺りは厳しくしている。
あと、年賀状にお子さんの写真を印刷されているハガキだと、「これ、買い取った後どうなるの?」と気にされる方もいらっしゃるが、そう気にすることでもない。
しばらく金券ショップで保管した後、郵便局行きだから。
だいたい、50円、52円の額面のハガキなら、25円~35円で買い取ってくれるだろう。
お客様の中には、年内しか買ってくれないと思い、慌てて12月のうちに持ってこられる方も多いが、12月になると、買取は、通常の古いハガキや書き損じと同じ買い取り率になっているところも多い。それならば、せめてお年玉の当たりくじをしてからでも遅くない。しかも当たった年賀状は郵便局で当たり商品をもらった後でも、ちゃんと買ってくれる。郵便局の当たりスタンプが押されていても問題ない。
もっとも、郵便局には交換制度があるので、5円の手数料を払って、他の商品と交換するのもいい。レターパックなどは特におすすめだ。
お得で便利なスマートレターとレターパックの使い方、古いハガキで交換?
金券ショップには、売りたい人と買いたい人がやってくるが、どちらが欠けても成り立たない。
売りたい人には売りたい事情があり、買いたい人には買いたい理由がある。
世の中はよくできているものだ。