職場のMさんのパソコンの画面を見て驚いた。
文字がビックリするほど小さいのだ。
見えてるの?
彼女は50歳前後である。
私の仕事は、パソコンが欠かせない。常にいくつものソフトを同時に立ち上げているが、その文字の大きさは自由に調節できるようになっている。もちろん若い人は画面を最小限にし文字を小さくしているが、私のような老眼を自覚するオバさんはどうしても文字が見やすいように画面を大きくする。
もちろん、同時にソフトを交互に見るには、画面は小さい方が効率がいい。そうは言っても、老眼になるとそう小さい文字は見えない。情報の誤認は後で大きな痛手となる。ここは、効率よりも正確性だ!と老眼を正当化している。
老眼は、ふつう40歳前後から始まると言われているが、その進行度合いはそれぞれである。Mさんは私より若いとは言え、さすがに老眼指数ゼロってことはないはずだ。なのにその画面の大きさを見ると、20代が開いている画面と同じ大きさだ。
私はトシもトシだし目が衰えてくるのは仕方がないとあきらめていた。
が、Mさんを見て、老眼って老化だけが原因だろうか?何か老眼を遅らせる秘策でもあるのだろうか?そんな思いがよぎった。
まさか、よく効くルテインとかブルーベリーのサプリでも飲んでるだろうか、それとも遠近両用のコンタクトレンズか?まさか、視力をよくする手術でもしたのか?
様々な憶測が脳裏をかすめたが、さっさと本人に聞けば済むことである。
「Mさんって、老眼ってないんですか?」
変な聞き方である。白髪なら、あったりなかったりするもんだが、老眼ってあったりなかったりするのか?自分で質問しといておかしい日本語だと思う。
Mさんによると、40歳を過ぎた頃には老眼の兆候があったらしいのだが・・・もっとも、心なしか文字がかすんで見えたりする程度だ。まあ、始まりはそんなもんだろう。だがそれと同時に肩こりと頭痛に悩まされ始めたのだとか。最初はちょうど更年期の時期だったのでそれだと思い、命の母Aを飲んだ。効かない・・・・次にルビーナ・・・・高麗人参茶・・・ナットウキナーゼ・・・・コッコアポなど色々試したが効かなかったと言った。
さすがにコッコアポ(脂肪を減らすサプリ)は意味わかんね―と思ったが、さらりと流した。
で、彼女は生活習慣を見直す必要があるのでは?という結論に達したらしい。
魚野菜を中心とした食事に切り替え、散歩を始めたという。
彼女の家の近くには見晴らしのいい公園がある。あたり一面、緑色の木々が茂っており池を囲みいい散歩コースである。私も行ったことがあるのでよく知っている。ちょうど今の頃は桜が満開のはずである。
気まぐれに週に2回ほど早朝に散歩するぐらいだったらしいが一年ぐらいすると何と頭痛が治ったんだとか、それと同時に肩こりも・・・・そしてかすんでたはずの文字も気にならなくなった。それだけじゃない、視力も0.2ほどアップして今年の免許証更新で眼鏡がいらなくなったそうだ。
実は私も5年ほど前から、30年近くも続いた免許証の眼鏡の条件が外れた。私の場合、老眼が進んで近眼が改善した。
但し、
そういった医学的根拠があるのかどうか気になって調べてみたが、それはないらしい。ただの偶然だったのだろう。
それともう一つ、近眼の人は老眼にならないという誤解もあるが、それもないらしい。ド近眼でさえ、老眼になる。
彼女の場合は老眼さえないのに、近眼が改善している。と言っても老眼で近眼が改善するのはさっき否定されたばかりだ。
要するに、彼女は年齢はどんどん進行しているのに、老眼の症状もあまりないし、近眼も改善している。
目の酷使は、老眼近眼ともに大敵だ。
老眼を感じ始めた当時、Mさんは経理事務(前職)をしており、毎日パソコンの細かい数字ばかりを見ていたと言う。眼精疲労から、肩こりになり、肩こりがひどくなると頭痛になる。コレ、デスクワークをする人には結構起こりやすいパターンだ。
「肩こりも頭痛も目のかすみも更年期障害なんかじゃなく目の使い過ぎから起きたんですよね、緑はいいですよ」とMさんは言った。
Mさんは公園の広い池の水面がゆらゆらと流れるのを眺めるのが好きなんだそうだ。
「1時間でも眺めていられますね、なんか吸い込まれるあの感覚がたまんないんですよね」
ヒマだな。
ルテインやブルーベリーのサプリ宣伝広告のような甘い言葉を並べ立てるつもりはないが、それでも、緑の木々を目を凝らし水面を眺めるという行為はMさんの目にいい影響を与えているのは間違いないだろう。何より、Mさんのパソコンの画面がそれを証明している。
なんと妬ましい。
でもほんとに緑っていいのか?
色の心理学によると、色は私たちの心に様々な作用を及ぼすらしいが、緑は緊張を緩め気持ちを安定させる効果があるという。緑のイメージは平和、安定、バランスだ。
目に最も相性がいいのが緑色だそうだ。緑色は色の中で目に最も刺激が少なく優しい色だ。7色の虹の真ん中に位置するのも意味深である。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の順番だ。
もともと老眼は、水晶体の衰えから起こる。水晶体とは、目のレンズに相当するもので遠くのモノや近くのモノを見るときにピントを合わせる働きをしてくれる。それが老化で筋肉が固くなってうまく機能しなくなる。そしてピンぼけが起きて手元のものが見えにくくなるのだそうだ。
老化だから多少の老眼は仕方がないとしても、私は本も読めなくなるような老後は嫌だ。老眼鏡で読めばいいじゃないかと思うが、やっぱり老眼があまりに進むと何かに打ち込むやる気みたいなもんは失せていくのだと思う。うちの母はお手毬とか人形とか手提げ袋とか針仕事がとてもうまい人であった。よく人に作ってあげては喜ばれていたが、70を過ぎた頃、目がつらくなって一切しなくなった。
確かに、老化は抗うことができない。だが、老眼はできるだけ遅らせたい!
それが遠くの緑を眺めるという方法だ。どうせなら,Mさんのように緑あふれる木々や草花がいい。もちろん田畑でも大いに歓迎だ。
私たちはパソコンやスマホの普及で近くのモノばかり見ている。生活そのものが老眼の進行を後押ししている。まずは意識的に遠くを眺めることが必要だ。
アフリカ人などは4・0や6.0など驚異的な視力を持つらしいが、彼らは常に自然の中で常に遠くの景色に目を凝らしているからだろう。
最初は、遠くの緑を眺めると言っても意識的努力が必要だ。だがこれが習慣になればシメタものだ。
幸い?うちは、適度な田舎である。外に出れば一つや二つ田畑が見える。いや、5分歩けば、あたり一面田畑だらけを堪能できる。なんと素晴らしい?環境だ。
パソコンの画面をワンランク小さいサイズに!
遠くの緑を見るって、楽勝じゃん。