北川泰さんの「運転者未来を変える過去からの使者」を読んでみた。
北川さんの本は初めてである。著者のことを知らずして本を読んだ。アマゾンの評価が高かったのと、レビューが200件以上あり、その中に「運が悪い人に読んでほしい」と書かれていたからだ。なぜか反応した。運が悪い人!ってところに?
自分のことを運が悪いと思っているわけではないが、よく考えると、宝くじにも当たらないし、町内の福引にも当たったことがない。めったにおみくじも大吉などには当たらない。やっぱ私は運が悪いのか?
だが、大した病気もしたことがないし、事故に遭ったこともないし、陰湿ないじめに苦しんだこともないし、お金に困ったこともない。いや、困っていても気が付かないのかも。
総じて私は、そうかわいそうなタイプではない。羨ましがられることもないが。だが、ここ最近、落ち込むことがあった。
だからだろうか、導かれるようにしてこの本を読んだ気がする。
ざっと始まりの部分だけ、かいつまんで説明しよう。
生命保険の営業マン岡田修一は、精神的に追い詰められていた。歩合給の修一に突然突き付けられた20件もの保険の解約、娘の不登校、避けてきた実家の問題。修一の頭はパンク寸前だった。「なんで俺ばっかり、こんな目に合うんだよ」そうつぶやいた修一の前に一台ののタクシーが近づいてきた。その名もおまかせタクシー。ここから、修一の運命が転じていく。さてさて、岡田修一はどう変わっていくのか?
この本は運というものついて書かれている。それは私たちが考えている運とちょっと違う。
私たちは運というものをどのように捉えているだろうか?
先日、同僚のパート職のHさんMさんが電話技能3級の社内試験を受けた。希望者は誰でも受けることができる。受かったのはHさん、そしてMさんは落ちた。みんな不思議がった。だって、Mさんはベテランで、ずい分以前から勉強しており電話対応もとても上手かったから。それに比べ、Hさんはまだひよっこで、電話対応も時々主任の応援が必要なこともあった。
私が、Hさんに「すごいね、1回で合格なんて」
そう言うと、彼女はこう答えた。
「いえ、たまたま運が良かっただけですよ」と、照れた。
そうだろうな、社内でこの試験に落ちた人は結構いる。意外と難しいのだ、この試験。たかが3級なのに。
私たちは、予想外のことが起きた時、運のせい、運のおかげにする。
その運は、生まれつき運のいい人と運の悪い人がいて、運のいい人は、何度も棚からぼた餅を落としてもらえ、運の悪い人は何度も泥餅を落とされる。何となくそんなイメージがある。私だけか?だって、運のいい人っていいことがいっぱい起こるし、運が悪い人は、何度も不運に出会う。何だか苦労するためにこの世に生まれてきた人っているよな。
物語の中の不思議な運転手は言う。「運がいい人なんていないし、運が悪い人もいない。運はそういうものじゃないんです。」
何もしてないのにいいことは起こらない。運は後払いなのだそうだ。ポイントのようにいいことをしてうんと貯める。そしてその運を使う。そして使わなかった運は後世に譲ることさえできるというのだ。
そしてその運は、機嫌が悪いと気づかないし、運に気づくアンテナは上機嫌の時に最大に発揮するのだそうだ。
何だか勝手な著者の持論のようにも思えるが・・・・・確かに幸せな人はいつも機嫌がいいことも事実だ。
先のような、HさんとMさんのような例はよくある。勝負の時に実力はもちろん必要だ。けれど、実力と結果が完全に一致するかというと、必ずしもそうではない。絶対合格と言われたはずの試験に落ちた経験はないか?私はない。そもそも絶対合格と言われたためしがないからだ。
私は以前から思っていた。あなたの周りを見てほしい。人が勝負に出るとき、受験でもいい、就職試験でもいいし、指相撲をしたときでもいい、この時実力ではなく、なにか別の力が働いているのではないか?と思ったことはないだろうか。
私たちはどんなに努力をしても報われないとやけになることがある。そんな時、今はポイントをためている時期なんだと思えば、なんだか気持ちが少し上向かないか?
そして・・・・
突然大きな幸運に出会った人は、そのたまったポイントを使っただけ。この考え方が私は好きだ。人を羨ましがらずに済む。
所詮人間は考え方次第だ。その考え方ひとつで気分は上がったり下がったりする。
私は、この物語に書かれていることが運の正体のすべてだとは思わないが、こんな考え方をすれば、もっと人生楽しくなるかも!と思わせてくれる。
物語に登場する修一の上司である脇屋は優秀な男であるが、仕事の極意をこう言っている。
「いつでも明るく楽しくいることだ。どんな時でもな」
何だか、拍子抜けするような答えだ。
極意とか、秘訣とか、コツとか、私たちは難しく考えるが本当は単純なことかもしれないな。運というのものもすごく簡単な法則で動いているのかもしれない。
私はこの本を、元気な時ではなく、ちょっと気分が滅入ったときに手に取ってほしいと思う。私のように。
いつしか雨はやみ、青空が顔を出す。そんな希望が見えてくるような気分にさせてくれる。
読み終えた後、どんな人が書いたか気になったので調べてみた。
著者の北川泰さんは、1970年生まれで愛媛県出身の方だ。1970年生まれで、1988年に学習塾「聡明舎」を創設。自ら教壇に立ち、人生の向き合い方を研究される。2003年に発表された「賢者の書」がデビュー作で、 その後次々と話題作を執筆されている。その世界観は幅広い世代の支持を受け、中国、韓国、台湾、ベトナムでも翻訳出版されている。
「きみに会えたから」「手紙屋」「上京物語」「ソバニイルヨ」「株式会社タイムカプセル社」「また、必ず会おうと誰もが言った」他多数。
メッセージ性が強くジャンルは自己啓発ではあるが、娯楽小説として読んでも十分に楽しめる。